就労系サービスにおける人員基準と設備基準と運営基準

障害福祉サービスにおける「基準」とは

障害福祉サービスを提供する事業者は、事業を開始・継続するために、各基準を遵守して運営することが求められます。これに違反すると、改善命令や報酬返還、最悪の場合は指定の休止や廃止となることもあります。そのため、事業者は「基準」をしっかり理解し、違反することのないよう維持・改善の努力をすることが経営リスク回避の第一歩となります。

ここからは、現行法における障害福祉サービスの基準について順を追って解説します。障害福祉サービスの「基準」はサービスごとに細かく決まっていますが、大きく分けて以下の3種類の基準があります。

  1. 人員基準
    • 障害福祉サービスに必要となる人員数や資格要件を定めたもの
  2. 設備基準
    • 障害福祉サービスに必要となる設備、部屋及びその広さの要件を定めたもの
  3. 運営基準
    • 障害福祉サービスの利用や運営にあたっての手順、記録書類、指針などを定めたもの

どの基準も重要ですが、実地指導において特に指摘が多いのは「人員基準」違反です。サービス管理責任者が不在もしくは要件を満たさない、後述する加算を算定するにあたって必要な人員が必要な日にいない、などが指摘されるケースが多いのですが、人員配置における資格要件、とみにサービス管理責任者の資格要件は非常に難解です。そのため、従業員の日々の出勤状況をチェックしつつ、常に基準違反がないかを念頭においておくことが必要です。

また、多くの地方自治体では、基準に沿った運営を行っているかどうかを自身の事業所で確認するためのツールとして、「自己点検シート」を公表しています。少なくとも年に1回はこれを実施し、事業所の内部監査を行っていくことをおすすめします。

基本報酬区分と加算についての理解も重要

運営において重要な要素が「基本報酬」と「加算」の算定構造と要件です。例えば、就労移行支援は就労定着実績、就労継続支援A型は平均労働時間、就労継続支援B型は平均工賃額によって基本報酬が大きく変動します。どの区分の基本報酬を算定できるかは事業所の経営に直結します。

加算についても同様であり、多くの要件を満たすことが求められます。法改正に伴う要件の変更には再度見直しを行うことが必要です。

就労系事業所における人員基準・設備基準の一覧

就労移行支援事業所の人員基準・設備基準(認定指定就労移行支援事業所を除く)

人員基準

役職配置数資格要件
管理者1人(原則として管理業務に従事する者であること。上記に支障がない場合他の職務と兼務可)都道府県による
サービス管理責任者常勤1人以上(基準を満たす場合であれば2人目以降は非常勤も可)利用者数が60人以下なら1人都道府県による
就労支援員利用者15人に対し1名以上(常勤換算)特にありません
職業指導員・生活支援員利用者6人に対し1名以上(常勤換算)特にありません

設備基準

役職要件
訓練・作業室訓練または作業に支障がない広さを有し、必要な機械器具等を備えること
相談室間仕切り等を設けること
洗面所、便所利用者の特性に応じたものであること

常勤換算とは?

常勤換算とは、その事業所の従業者の1週間の合計勤務時間を、常勤職員が1週間に勤務すべき時間(32時間を下回る場合は32時間で計算)で除することにより、当該事業所の従業者の人数を算出する方法をいいます。

常勤換算の計算式

常勤換算後の人数 = 従業員全員の1週間の合計勤務時間 ÷ 常勤職員の1週間の勤務時間

就労継続支援事業所(A型・B型共通)の人員基準・設備基準

人員基準

役職配置数資格要件
管理者1人以上(原則として管理業務に従事する者であること。上記に支障がない場合他の職務と兼務可)都道府県による
サービス管理責任者常勤1人以上(基準を満たす場合であれば2人目以降は非常勤も可)利用者数が60人以下なら1人都道府県による
職業指導員・生活支援員利用者数を10人に対し1名以上(常勤換算)特にありません

設備基準

役職要件
訓練・作業室訓練または作業に支障がない広さを有し、必要な機械器具等を備えること
相談室間仕切り等を設けること

サービス管理責任者について

概要

障害者総合支援法においては、サービスの質の向上を図る観点から、新たにサービス事業所ごとにサービス管理責任者の配置を義務付けています。サービス管理責任者は以下の役割を担います。

  1. 個々のサービス利用者のアセスメントや個別支援計画の作成、定期的な評価などの一連のサービス提供プロセス全般に関する責任
  2. 他のサービス提供職員に対する指導的役割

サービス管理責任者の要件

サービス管理責任者の要件については、以下の二つの要件を満たす必要があります。

実務経験

実務経験の内容必要な実務経験年数
障害者の保健・医療・福祉・就労・教育の分野における直接支援・相談支援などの業務に従事した経験5~10年

研修修了

研修の種類内容
相談支援従事者初任者研修(講義11.5時間)サービス提供の基本的な知識を習得
サービス管理責任者研修(講義及び演習19時間)実務に即した知識と技能を習得

サービス管理責任者の配置基準

サービス管理責任者については、障害者福祉サービス事業所ごとに、以下の基準で配置されます。

  • 療養介護、生活介護、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援など…利用者60人につき1人
  • グループホーム…利用者30人につき1人

サービス管理責任者の実務経験

サービス管理責任者の実務経験の範囲については、以下のように定められています。

業務の範囲実務内容必要な実務経験年数
相談支援業務医療機関において相談支援業務に従事する者など5年以上
直接支援業務就労支援に関する相談支援業務に従事する者など10年以上
福祉有資格者等医師、歯科医師、薬剤師などの有資格者が相談支援業務に従事する場合5年以上

研修の修了

サービス管理責任者及び児童発達支援管理責任者の要件については、以下の研修を修了する必要があります。

研修修了要件

研修の種類内容
相談支援従事者初任者研修(講義部分)基本的な知識を習得
サービス管理責任者研修実務に即した知識と技能を習得
児童発達支援管理責任者研修子供向け支援の知識を習得

サービス管理責任者は、障害者福祉サービスの質を向上させるために不可欠な役割を担っており、その要件と役割を理解することが重要です。

実地指導について

実地指導は、障害福祉サービス事業者の運営の適正化や指導を目的とし、自治体が訪問して行うヒアリングや法定書類の確認です。

監査とは異なり、不正や違反の摘発が目的ではなく、助言・指導を通じてより良い支援を実現するために行われます。実地指導には事前に通知があり、必要書類の準備が求められます。

特別な書類はなく、日頃から準備している法定の書類で対応可能です。事例として、決算報告書や運営規程などの提出書類があり、当日の準備書類も通知文書に記載されています。